2011年7月16日土曜日

名古屋市の空間放射線量率、数値は跳ね上がったのか?

愛知県を含む各都道府県は、6月くらいから、地上10m以上の場所に設置されているモニタリングポストだけでなく、モニタリングポストがある測定ポイントと同じ敷地内の地上1mの場所でも空間放射線量率を測定し、それぞれのHPなどで公表し始めました。

すると、例えば愛知県では、モニタリングポストの数値が0.040μSv/hほどだったのに対して、地上1mの数値は0.065μSv/hほどだと判明しました。

これを受けて、一部の新聞、週刊誌などで、あたかも愛知県が福島原発事故による放射能の影響を相当受けていると言わんばかりに、「地上1mで測定したら、数値が跳ね上がった!」という内容の記事が掲載されましたが..

僕は、これが正しいとは思いません。そもそも、モニタリングポストの数値と地上1mの数値を横並びで比較しても良いのでしょうか。

モニタリングポストの測定機器と、地上1m測定に使われる測定機器は別物で、測定場所も違う為、この二つの数値を単純に比較しても、あまり意味はないと思うのです。※測定精度ではモニタリングポストの測定機器が勝ります。

比較するのであれば、福島原発事故の前と後のモニタリングポストの数値同士、または、これ以外に、福島原発事故の前と後で「同じ場所」を「同じ条件」で「同じ測定機器」を使い測定した数値同士でなければ、正しい比較にはならないでしょう。

(必ずしもすべての都道府県がそういうデータを公表しているわけではないですが)愛知県はHP上に、福島原発事故の前と後のモニタリングポストの数値、福島原発事故の前と後の地上1mの数値を掲載しています。

例えば、愛知県の平成20年度のモニタリングポストの数値は、0.036〜0.059μSv/hでした(資料はこちらです→http://www.pref.aichi.jp/cmsfiles/contents/0000006/6579/h20.pdf)。福島原発事故の後のモニタリングポストの数値は概ね0.040μSv/hです(資料はこちらです→http://www.pref.aichi.jp/kankyo/katsudo-ka/kuukanhousya.html)。

また、愛知県が平成20年度に、地上1mで測定した数値(県環境調査センター内敷地をGR-135による測定)は、0.063〜0.074μSv/hでした(※県環境調査センターによると、資料にある93nGy〜104nGyは宇宙線量30nGyを加えた数値であるということで、それ差し引きして、Svに換算すると、0.063〜0.074μSv/h。資料はこちらです→http://www.pref.aichi.jp/cmsfiles/contents/0000006/6579/h20.pdf)。そして、福島原発事故の後に、地上1mで測定した数値(県環境調査センター内敷地をGR-135による測定)は、現在のところ概ね0.065μSv/hです(資料はこちらです→http://www.pref.aichi.jp/kankyo/katsudo-ka/kuukanhousya.html)。これは、福島原発事故の前(平成20年度)と後(平成23年6月〜)で、「同じ場所(県環境調査センター敷地内)」を、「同じ条件(地上1m)」で、「同じ測定機器(GR-135)」を使い測定していますので、福島原発事故による放射能の影響の有無を考える上で、正しい比較ができる資料だと言えるのではないでしょうか。

そして、これらの資料を比較すると、少なくとも愛知県名古屋市に限って言えば(※モニタリングポストのある県環境調査センターは名古屋市北区にあります)、福島原発事故の後に、空間放射線量率が明らかに上昇したという事実はなく、愛知県が発表したように、「福島原発事故による放射能の影響は特に見受けられない」と言えるのではないでしょうか。

放射能汚染問題については、無防備過ぎるのも困りますが、資料やデータの冷静な分析をせずに無闇に騒ぎ過ぎるのも問題だと思います。

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