2011年8月9日火曜日

「放射能防御プロジェクト」による首都圏の土壌調査結果について..

昨日(8/8)、「放射能防御プロジェクト」という市民団体が、独自に首都圏の土壌調査を行った結果を公表しました。

福島原発事故が発生してから5ヶ月が経とうとしていますが、行政は積極的にこのような調査を行っていませんでしたから、市民団体が主導でこのような調査を行った意義はとても大きいと思います。僕も、一国民として、このような調査を行ってくれた「放射能防御プロジェクト」に感謝したいと思います。

この調査結果を見ると、非常にショッキングです。数万Bq/㎡を超える汚染地も多く、中には何十万Bq/㎡の汚染地もあるようです。このように、実測で土壌の汚染状況を明らかにすることは、とても重要だと思いますし、本来すべての国民は、このような事実を知る権利があるのではないでしょうか。

但し、僕は、この調査結果の一部に大きな問題があると思っています!

それは、この調査結果では、チェルノブイリで適用された、強制避難区域(148万Bq/㎡〜)一時移住区域(55万5千Bq/㎡〜)希望移住区域(18万5千Bq/㎡〜)放射線管理区域(3万7千Bq/㎡〜)という数値と、今回の調査で判明した首都圏の数値を比較していますが、問題点は、これらのチェルノブイリの数値はセシウム137のみのもの(資料はこちらです→http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2011/siryo16/siryo2.pdf)であるのに対して、首都圏の数値はセシウム134とセシウム137を足したものになっているということです。

当然、セシウム137のみの数値(チェルノブイリ)と、セシウム134とセシウム137を足した数値(首都圏)を比較することは、誰が見ても正しい比較ではありません。つまり、チェルノブイリの数値を引き合いに出すのであれば、これと比較する首都圏の数値はセシウム137のみの数値でなければならない、ということです。

例えば、このチェルノブイリの放射線管理区域(3万7千Bq/㎡〜)に該当すると表示されている東京の1、江戸川区東葛西47,515Bq/㎡という数値は、セシウム134とセシウム137の合計値ですので、チェルノブイリの数値と比較するのであれば、セシウム137のみの数値である25,805Bq/㎡(397Bq/kg×65=25,805Bq/㎡)、これを比較に用いるべきでしょう。そうすると、これは、チェルノブイリの放射線管理区域の基準値以下であり、この区分には該当しないということになります。

このチェルノブイリの希望移住区域(18万5千Bq/㎡〜)に該当すると表示されている東京の2、江戸川区臨海町240,045Bq/㎡という数値は、やはりセシウム134とセシウム137の合計値なので、セシウム137のみの数値を導き出すと137,930Bq/㎡(2,122Bq/kg×65=137,930Bq/㎡)となり、これは、チェルノブイリの希望移住区域(18万5千Bq/㎡〜)ではなく、放射線管理区域(3万7千Bq/㎡〜)に該当するという認識が正しいということがわかります。

せっかく、このような素晴らしい調査を行ったのですから、正しい分析と比較を行うとより良いのではないかと思うのですが..

但し、いずれにせよ、セシウム137の数値が数万Bq/㎡を超えるレベルの汚染は過小評価されて良いものではないと思いますし、今回の福島原発事故が首都圏に与えた影響の大きさを改めて思い知らされた気がします。個人的には、決して、楽観視できる数値ではないと考えています。やはり、この調査結果から判断すると、首都圏の放射能による土壌汚染は深刻であると認識せざるを得ないのではないでしょうか..

因みに、日本分析センターのデータベースを見てみますと、興味深い事実がわかります。

1964年7月22日に採取された石川県富来町の土壌のNo.56)からは、約280Bq/kgのセシウム137が検出されていて、これは18,200Bq/㎡(280Bq/kg×65=18,200Bq/㎡)です。また、1990年9月に採取された新潟県の土壌のNo.808)からは、252Bq/kgのセシウム137が検出されていて、これは16,380Bq/㎡(252Bq/kg×65=16,380Bq/㎡)です。これらの土壌は、今回の首都圏の土壌調査で明らかになった、東京都江東区森下(セシウム137、220Bq/kg、14,300Bq/㎡)千葉市中央区新宿(セシウム137、253Bq/kg、16,445Bq/㎡)千葉県富里市十倉(セシウム137、283Bq/kg、18,395Bq/㎡)などと同じ程度の汚染レベルだったようです。

このデータを見ると、世界各国が行った核実験やチェルノブイリ原発事故などの影響により、今回の福島原発事故が発生する以前から、日本の一部の土壌が重大な放射能汚染を受けていたことが明白で、これまで放射能汚染に関心が薄かった無知な僕は、ただただ驚いてしまうのです..

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